『「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと』(文藝春秋)の原稿を書きました。
本書は全7章構成(464ページ)です。
1~4章は前作の映画公開前後(2015~2016年)に開催されたトークイベントでの対談の模様を、書籍用に再構成したものです。
5章は呉市で行われたイベントの合間と直後に伺った話をまとめました(2018年)。
6章は『さらにいくつもの』に向けての対談です(2018年)。
7章は片渕監督への単独インタビュー(2019年夏)です。第6章の対談後に映画公開が延期となったので、新作が完成に近づいた状況であらためてお話を伺いました。


映画を鑑賞された多くの方が、原作と映画は「まるで別物のよう」と感じたようです。SNS上でもそのような感想をよく見かけますが、いずれも否定的な意味ではなく、原作は原作で完成しており、それを下敷きに映画は映画として完成しているといったニュアンスでした。
両者の違いは何なのか。
それがマンガとアニメーションという表現手段に起因するのか、あるいはこうの先生と片渕監督の作家性の違いに依拠するのか。お互いに多大なリスペクトを持ちつつも、創作者としては異なる特質を持つふたりの“違い”が浮き彫りになるように心がけながら、お話を伺ったり原稿を書いたりしました。『この世界の片隅に』について考える際の一助となれば幸いです。
なお、この作品のファンには、普段からアニメやマンガに親しんでいるわけではない方も多いことを意識して、できるだけ注釈を多くつけました。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の劇場公開は2019年12月20日から。前作同様に、長く多くの方に愛される作品になることは間違いないでしょう。そして返す返すも僕が思うのは、何度でも原作マンガを読み返してほしいな、と。
このマンガがすごい!2010」でレビュー記事(オトコ編11位)を書いて以来、『公式アートブック』『公式ファンブック』『さらにいくつもの映画のこと』『公式アートブック増補・改訂版』と原稿を書いてきましたが、つねに頭にあったのは、もっと原作が読み込まれるべきだ、ということ。そのスタンスは、今後も変わらないんじゃないかと思います。