
「トキワ荘マンガミュージアム」とは?
「トキワ荘マンガミュージアム」は、かつて東京都豊島区に存在した木造アパート「トキワ荘」を再現した博物館である。「トキワ荘」は、手塚治虫や藤子不二雄(藤子・F・不二雄、藤子不二雄A)、石ノ森章太郎、赤塚不二夫をはじめ、多くのマンガ家が青春時代を送ったアパートだ。マンガ界のレジェンドたちが、まだ“マンガ家の卵”の時期をともに過ごしたことから、「マンガ家の梁山泊」や「マンガアパート」などの異名を取り、藤子不二雄A『まんが道』によってその名は広く知られるようになった。「トキワ荘マンガミュージアム」は、もともとは2020年4月に開館を予定していたが、現在のコロナ禍の影響で延期され、先月の7月7日にようやくオープンした。
さっそく訪問してきたので、その模様をレポートする。
現在は新型コロナウィルス感染症の拡大防止策として、入館は予約制となっている。
とはいえ、「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」や「三鷹の森ジブリ美術館」のようなチケット前売り制というわけではなく、「トキワ荘マンガミュージアム」の公式サイトで事前に予約をするだけでOK。面倒な登録手続きのようなものはなく、フォームから必要事項を記入して送信すればすぐに予約受付の自動返信がくるので、スムーズに予約を完了できる。なお、入場料は無料だ。
ミュージアムへのアクセス
「トキワ荘マンガミュージアム」の所在地は東京都豊島区南長崎。実際にトキワ荘が建っていた場所とは少し離れた、南長崎花咲公園(トキワ荘公園)内に建っている。アクセス方法として、
・西武池袋線「椎名町」
・西武池袋線「東長崎」
・都営大江戸線「落合南長崎」
の3つが最寄り駅だが、個人的には「椎名町」から徒歩で目白通りまで出て、二又交番(南長崎交番)からトキワ荘通りに入るルートをオススメする。道中で「トキワ荘通りお休み処」「トキワ荘マンガステーション」「トキワ荘跡地モニュメント」「中華料理 松葉」といった関連スポットがあるので、あらかじめ場所を確認しておき、ミュージアムからの帰りに寄るといい。
「中華料理 松葉」に関しては、こちらの記事もご参照を。

「トキワ荘マンガミュージアム」は住宅街にあるので、周辺には商店が少なく、コンビニエンスストアも(目立つ場所には)ない。今の時期、熱中症対策に水分補給が欠かせないので、あらかじめ駅前でペットボトルの飲料を購入しておきたい。
ただし、ペットボトルを手に持った状態でミュージアムに入館することはできないので、バッグを用意しておこう。また、寺院や日本建築に訪れる機会が多い人ならなじみ深いことだが、木造建築物は素足での入館はできない。木材に皮脂がつくと掃除が困難なので当然の措置で、とはいえ夏場だとサンダルで訪れる人もいるだろう。「トキワ荘マンガミュージアム」では、素足の人のためにビニール製の足カバーを用意してくれるものの、もともと靴下を履いて来館するのが望ましい。

※ミュージアム前にある模擬電話ボックス。当時の電話ボックスを再現した形状で、どことなく『ドラえもん』に出てくる「もしもボックス」を想起する。
展示内容について
館内は2階がトキワ荘の各部屋の再現になっており、1階にはトキワ荘出身のマンガ家の関連資料が集められている。つまり「宝塚市立手塚治虫記念館」のような、作家や作品内容に関する「マンガの美術館」ではない。昭和30年前後の生活史や文化史に、展示の主眼が置かれている。その意味では、東京都大田区の「昭和のくらし博物館」にイメージは近い。
※画像は「昭和のくらし博物館」
「トキワ荘マンガミュージアム」の2階は、一部は写真撮影が可能だ。各部屋は四畳半一間だが、物の置かれていない部屋と、以下のような生活空間を比較できるので、「意外と広い」「物を置くと狭い」といった、原寸サイズに身を置いた際のリアリティを感じることができる。現代の住宅事情から考えると、割合と廊下が広く、そうした“ゆとり”が感じられたのも印象的だった。

生活空間を再現した部屋以外では、年表や地図、物価など、当時の暮らしに関する資料がパネルになって展示されており、各パネルには資料の出展が明示されている。映画150円の時代にLP1枚2100円はかなり高価な印象を受け、これを買い集めていた石森章太郎(当時)の浪費家ぶりがリアルに伝わる。出展資料がマンガおよびマンガ関連本であれば、メモしておくと「トキワ荘マンガステーション」で探しやすい。こちらでは実際に本を手に取ることができるので、閲覧が可能だ。
1階にはトキワ荘解体時に手塚治虫がイラスト描きをした天井板、トキワ荘をフィギュアで復元したジオラマ、関連書籍(閲覧不可)、学童社「漫画少年」のバックナンバー(閲覧不可)などが展示されている。
現場で感じるリアリティというのは、確かにある。また、知識や情報がそれを補完するのも確かで、「トキワ荘マンガミュージアム」はその両面で「トキワ荘を感じられる」つくりになっている。
新型コロナウイルスの感染状況次第では、博物館や美術館は、また急に入館制限が設けられたり、休館になったりする可能性もある。自由に行けるうちに行っておくのも大事なので、今週~来週のお盆期間に来館するのをオススメしたい。
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