『ハクメイとミコチ』はどんな作品?

『ハクメイとミコチ』のアニメ化が発表された。
リンク先にあるティザービジュアルが素晴らしいので、ぜひご覧になっていただきたい。
なお、ナタリーの記事には、
またりんかい線・国際展示場駅にて、本日8月7日から8月13日まで大判ポスターが掲出される。
とある。つまりコミケ期間中にコミケ会場最寄り駅に広告が掲示されるわけだ。注目作品になることは必至といえるだろう。

『ハクメイとミコチ』は、身長9センチの小人の女の子、ハクメイとミコチの生活を描いた作品である。僕がこの作品をどれくらい好きかというと、『このマンガがすごい! 2014』(2013年12月刊)のアンケートで投票しているくらいだ。
2014
このときはまだ1巻しかリリースされていなかったけれど、その1冊だけで十分に魅せられてしまったのである。
では、この作品はどのような魅力を持っているのか。そこを考えてみたい。

「衣食住」の描写

ハクメイとミコチは、森に住むこびとである。
3頭身で描かれるこびとたちは非常に可愛らしい。
そして、身長9センチのミニマルな視点から捉えられた大自然の雄大さは圧巻の一言。背景の描写力と、その「ミニマルな視点」を表現する構図の面白さに心を奪われる。

ハクメイとミコチが暮らす世界は、ファンタジー世界である。魔法(のようなもの)もあれば、付喪神も出てくる。ハクメイとミコチ以外にもこびとは存在し、町に定住している者もいるのだ。
また、この世界の動物や昆虫は擬人化されており、ハクメイやミコチと会話ができるし、動物や昆虫にも仕事があり、一般市民として社会生活を営んでいる。動物の毛並み、昆虫の光沢など質感へのこだわりは、とてもフェティッシュだ。

「こびとが動物や虫と一緒に暮らす」というと、まるでメルヘンな絵本のような世界だが、おとぎ話が省略するパート……、すなわち「生活」が徹底的に描き込まれている。
ミコチは森で採れた(もしくは町で仕入れた)植物や果物から保存食や日用品を作り、料理をする。食マンガのように料理や食事シーンが丁寧に描かれるが、本作『ハクメイとミコチ』の場合は「食」だけにこだわっているわけではない。ミコチは裁縫もするし、ふたりの衣装は機能性や実用性、ファッション性に富んでいて、眺めているだけで楽しい。
また、ハクメイは大工なので、建物の補修をしたり、柿の葉を使ってテントを造ったり、露天風呂を造ったりする。
「衣食住」すべてが丁寧に描かれているので、そこに「生活」の息吹を感じ取ることができるのだ。
そしてまた、手仕事に対するリスペクトが作品全体に貫かれているのが心地いい。

このファンタジー世界で、ハクメイとミコチは、どこか遠くまで指輪を捨てに行くような大冒険をするわけではない。この作品は丹念に「衣食住」を、すなわち日々の営みを描く。
ディテールまでこだわった描写を積み重ねることで、このオリジナリティあふれる世界観のリアリティを担保しており、それが本作を良質なハイファンタジー作品として成立させているのだ。

僕は『人生フルーツ』というドキュメンタリー映画にいたく感動したのだが、『ハクメイとミコチ』はファンタジー作品でありながら、どこか『人生フルーツ』に通じる生活描写を感じる。

「暮らしぶりに目を見張る」
そんなファンタジー作品である。

なお、本作はkindle版もリリースされているが、単行本の装丁が素晴らしい点にも言及しておきたい。所有感を満たされるつくりになっているので、できれば書店で書籍版を手に取ってもらいたい。