“持たざる者”の物語としての『キン肉マン』

『キン肉マン』は38巻からはじまった「完璧超人始祖編」が60巻で終了し、この61巻からは新シリーズに突入する。
新シリーズ開始時点では、
 ・設定部分で残る大きな謎は大魔王サタンの存在
 ・超人血盟軍の動向
以上の2点を注目ポイントとしてあげたが、読者の見たいものはキッチリと抑えつつも、読者の予想のはるか上をいくのがリスタート後の『キン肉マン』の真骨頂。

新シリーズでは、マッスルガム宮殿(正義超人)、魔界(悪魔超人)、超人墓場(完璧超人)が封印され、手薄になった地上にあらたな敵が攻めてくる。 その敵を迎え撃つのが、ウルフマン、ベンキマン、カナディアンマン、ティーパックマン、カレクックの5人。超人強度が強さのすべてではないものの、なにせティーパックマン(25万)やベンキマン(40万)にいたってはミートくん(50万)より低いのだから、彼らがどんなファイトを見せてくれるのか、興味は尽きない。

おもえば『キン肉マン』は“持たざる者”の物語だった。
地球に遺棄されたダメ超人が、超人界を牽引するキン肉族の王子としての自覚を持ち、努力と友情によってその才覚を開花させていき、そして新しい王となる。いわば成長の物語であり、貴種流離譚の一形態でもあった。その姿に日本中の少年たちが、やはり成長過程にある自分たちの姿を重ねあわせ、この成長譚に傾倒したのだが、「キン肉星王位争奪編」を通じてキン肉スグルは王としての資質を証明し、さらに「完璧超人始祖編」においては神にも比肩する存在同士(ザ・マンvs悪魔将軍)の諍いを調停するまでに至った。

もはやキン肉マンは、いくら本人が「最低のダメ超人のまま」(57巻)と思っていようと、すでに彼は周囲から待望される存在となっている。少年マンガ的な「成長物語」は終焉を迎え、スグル本人を主人公とする物語としては、青年マンガ的なテーマを背負うべき存在となっているわけだ。

一方でウルフマン、ベンキマン、カナディアンマン、ティーパックマン、カレクックの5人は、本編では完全に負け組。初期『キン肉マン』にあった「“持たざる者”の物語」のエッセンスを多分に引き継いでくれるメンバー構成といえるだろう。
この61巻ではティーパックマンが大々的にフィーチャーされている。前シリーズでは7人の悪魔超人など予期せぬ超人が活躍した実績があればこそ、どう考えても勝ちブックの見えないこれら5超人が、ただの「噛ませ犬」では終わらない可能性を残している、ともいえる。
なお、映画『ロッキー』に代表されるような、「負け犬たちのワンスアゲイン」物語として見る場合、本編(61巻では未収録)で登場した“あの”超人のリベンジにも注目したい。

ちなみに、ウルフマン、カレクック、ベンキマンに関しては、超人列伝(読切)でもエピソードが描かれているので、今シリーズでの単行本収録にも期待が膨らむ。

来年も『キン肉マン』

なお、61巻と同時に「『キン肉マン』ジャンプ ベストバウトTOP10 完璧超人始祖編」も発売された。
内容的には、「完璧超人始祖編」のなかから読者投票でベストバウト(10位)を決めるという企画モノ。勝負が決着する回を再収録したものなので、60巻まで読んでいれば、すべて既読の内容なのだが、ジャンプと同じ判型で読めるのはうれしい。また、各順位のバウトについて、作者コメントが読めたり、巻頭の「2018年キン肉マンカレンダー」に小ネタが満載だったりと、ファンにはうれしい内容。マストバイといえる。

というわけで、「このマンガがすごい!2018」でも「俺マン」でも『キン肉マン』に投票しているように、来年2018年も相変わらず『キン肉マン』の連載を追いかけていくことは必至だ。